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~2006年 アメリカ映画 TOHOシネマズ南大沢にて鑑賞~
絶賛の声ばかりが聞かれるこの作品、平日の夜に観てきました。大スクリーンに観客は6名。贅沢な時間でした。
絶賛の声ばかりが聞かれるこの作品、平日の夜に観てきました。大スクリーンに観客は6名。贅沢な時間でした。
さて、評判どおり「硫黄島からの手紙」はいい作品です。
共和党員でもあるバリバリの自由主義者・イーストウッドが、硫黄島戦を客観的に描いているということに驚きを覚えます。
アメリカ映画にも関わらず全編日本語で通したというのも素晴らしい。
ハリウッド的なヒロイズムや欺瞞とは無縁の、良質な戦争映画です。
ちょっと前に公開された日本製の太平洋戦争映画が、ハリウッド的ヒロイズム満載の「男たちの大和」だったことを思うと、なんだか恥ずかしく思えます。
しかし、素晴らしいという声はいくらでもあるので、あえて厳しいことを書いてみます。素晴らしいからこそ、残念だなと思う点もあるわけです。
まず、「硫黄島戦って、あんなサッパリしたものなのか」という点。
硫黄島では、2万人もの日本兵が戦死しています。数少ない硫黄島戦の生き残りの方々も、「あんなもんじゃなかった」という風に感じられているそうです。
地熱50度の洞窟の中で、食うものも飲むものも無く、体重30kg台にまで痩せ衰え、日々アメリカ兵の襲撃に怯える毎日。
その苛烈さは、「想像を絶する」という表現ですら生ぬるいでしょう。
現実の苛烈さを思うと、日本兵たちの苦しみが表現しきれていないと思えました。
次に「リアリティ」の点。細部にまでこだわってはいると思いますが、やはり現実にはありえない描写も多いようです。
映画関係のとある掲示板での、自衛官の方の書き込みによれば、
『日本兵の服装が余りにおかしく、栗林中将は指揮官なのに参謀肩章を付けていた(指揮官が付ける事はない)』
『将校が軍刀を携行していない(兵器ではなく、服装の一部)』
『ライフルは小銃と呼ぶべき』
と、いろいろと奇異な点はあるようです。
私のような素人には気づかない小異ではありますが、ちょっと資料に当たればすぐにわかる、初歩的なミスとも言っていいでしょう。
あと、前述の「リアリティ」に通じる部分ではあるのですが、日本兵の描き方があまり現実的ではないように思えました。
二宮演じる「西郷」は、軍のなかで異端児として描かれてはいましたが、実際に当時の陸軍組織のなかで、彼のような存在はありえたのか。かなり疑問を感じます。
厳しいことを書きましたが、前述の通りいい作品であることには違いありません。
さて、この作品のおかげで、「硫黄島」に一気に注目が集まり、一種の硫黄島ブームと言っていい状況が生まれています。
あまり戦後日本で語られてこなかった硫黄島に注目が集まるのは悪いことではないですが、硫黄島ばかりに注目が集まるのには違和感を覚えます。
激戦地は、当然硫黄島ばかりではないのです。インパールでも、レイテ島でも、ニューギニアでも、無数の日本兵たちが「お国のため」と信じて死んでいったのです。
「太平洋戦争」をめぐっては、いまだに日本人の間でも評価が分かれてしまい、「南京大虐殺」「従軍慰安婦」といった、(語弊はありますが)些細な事象で不毛な議論が繰り広げられています。
あの戦争はいったい何だったのか。
戦争を知らない世代ばかりになってしまった日本ですが、だからこそ、イデオロギーに毒されず太平洋戦争を見つめることができると私は信じています。
ヒロイズムにもニヒリズムにもイデオロギーにも毒されない太平洋戦争映画が、日本のクリエイターたちの手で作られることを願わずにはいられない。
そんな気にさせられる映画でした。
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