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マイペンライがモットーです
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~2007年 日本映画 テレビ録画にて観賞~

日本に住む「クルド難民」を追いかけたドキュメンタリー映画。こうした社会性の高いドキュメンタリーは、得てして観点が一方的すぎたりするものですが、この作品はそうではなかった。原一男の快作「ゆきゆきて、神軍」を連想してしまいました。

この映画では、クルド難民として日本政府に認定を求めているカザンキラン一家を追いかけているのですが、そのカザンキラン一家の父アーメットさんと、ゆきゆきて・・・の奥崎謙三がダブって見えたのです。
これはきっと、人物が似ているということではなくて、人物へのアプローチの仕方、人物との距離感が似ているのかなと思い、もしかしたら監督の野本大は原一男の直接の影響を受けているのでは、と直感。野本監督のプロフィールを見ると、日本映画学校出身。
ますますコレは臭いと思いネットで調べてみると、当の原一男のブログ「Docu×Docu」にありました。
やはり、直接的な影響をモロに受けています。野本監督は、原一男が日本映画学校の講師だったときの学生で、驚くことに、この映画はそもそも野本が卒業制作作品として作ろうと原一男に相談を持ちかけたものの却下されたもの。
割と私は直感が働くほうではあるのですが、こうズバリと当たってしまうと、ちょっと気持ち悪くなりました。いや、それくらい、やっぱり作風が似てるんでしょうね。

この映画では、野本監督は撮影の対象であるカザンキラン一家に極めて近い立場にいます。ただの撮影者ではなく、カザンキラン一家にとって最も信用できる日本人と言ってもいいような存在になっていて、しかもその関係をありのままにカメラの前に見せています。

「ドキュメンタリー」「ノンフィクション」というジャンルでは、普通「客観的で中立であること」が重要であるように思われますが、実際には中立でありえるはずはありません。無限にある事象のなかから何を映し出す、あるいは描くのかということを選択した時点で中立ではありえないわけで、世の多くの「ドキュメンタリー」「ノンフィクション」は、あたかも中立であるように装っているだけだったりします。

野本監督は、そのことがわかっているんでしょう。原一男の教え子なわけですから。
だから、「私は中立です」といいた顔をせず、カザンキラン一家の親友の立場で描ききっています。私はその点に、とても好印象を持ちました。

また、単純にカザンキラン一家の側に立ち、「日本政府は難民として認めるべきだ」と主張するだけであれば、どこかの市民団体のプロパガンダ的クソ映画になっていたかもしれませんが、この映画はそんなことまったく主張しません。
カザンキラン一家とは親友でありながら、「クルド難民って何だ?」「何で日本にいるんだ?」という、恐らく一般的な日本人が持つ極めて真っ当な疑問を感じながら彼らを描いています。

前述の原一男のブログでは、

が気になることもあった。難民問題に関して自分は無知だった、という態度を正面切って押しだし、ストーリーの中に組み込み、全面展開している点だ。結果的 にはこれが、若者らしく、潔く、いっそ清々しい態度として観客に支持されたのだろうし、共感もされたのだろう。そういうふうに見る側が受け止めてくれるの は野本のキャラの得な部分だなあとも思う。だが、問題は、野本自身が、“無知な私”を演じることで、作品として成り立つという判断をしたということだ。よ く言えば、逞しいとも言えるが反面、逃げの一手でもある。

と、この点は批判されています。

元教え子に対する厳しい意見ですね。確かにその通りかもしれません。難民問題というのは、ドキュメンタリーを創る側の人間からすれば、決して一筋縄でいくテーマではなく、考えれば考えるほど、接すれば接するほど泥沼に入っていくようなテーマだと思います。
その難民問題に、「私は素人ですから」と開き直って描いたのは、「逃げ」と受け止められても仕方ないかもしれませんね。

でも、それでも私はこの映画が好きです。撮影対象のカザンキラン一家が結局強制送還され、トルコまではるばる追いかけていき、「クルド問題」の実態の怪しさを知るというストーリーは、単純におもしろかった。

ただ、先のブログで原一男も言っているとおり、この手法が許されるのは、これが処女作だから。「私は素人です」は次には使えないでしょう。

この記事を書いている2010年9月時点では、ネットでもまったく次回作の情報も何もありませんが、野本監督には一発屋で終わってほしくないものです。
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